第11章 スターと恋(轟焦凍)
約束通り、20時。
駅前に来ていた焦凍は、もう繭莉が来ていないかと辺りを見回した。
まだ、来てねぇか。
そう思った時、上着の裾をくっと引っ張られて後ろを振り向くと、そこには繭莉がいた。
急いで来たのか、息が上がって頬が上気している。
「ごめん、待っちゃった?」
「いや、今来た」
よかったと笑顔を見せる繭莉を見て、どきんと胸が高鳴る。
「行こ」
そう言われて、手を引かれた。
突然の事で吃驚するが、彼女はそれを気にも留めていない様子だった。
もしかして、こういうの慣れてんのか?
いやでも……
「焦凍くん」
「え?」
「何か、話しながら歩こっか」
繭莉が話し始めてくれたおかげで、ぽつぽつと話が進んでいく。
誕生日、血液型。
好きなもの。
学校の事。
将来の夢。
お互いのプロフィールになる程度には、情報を入手できた。
だけど、本当に知りたかった事は……。
それを聞こうとして、喉の奥から言葉が出そうになったその時、繭莉の足が止まった。
「着いたよ」
「え、ここって」
2人の目の前にあったのは、こじんまりしたアパート。
「ここ?……私の家」
ドアの鍵を開けながら繭莉が言った。
「嫌じゃなかったら、入って」
そう言われて中に入ると、ふんわりと女の子独特の甘い匂いがした。
「誰も、いねぇのか?」
「私、1人暮らしだから」
電気が点くと、ちょっと女の子のイメージとは離れたシンプル過ぎる部屋が姿を現した。
「あ、適当に座ってて!お茶淹れるね」
繭莉がぱたぱたとキッチンの方へ行ってしまったので、言われた通り適当にベッドに腰掛ける。
いいのか?今日知り合ったばっかの男、家に上げて。
……本人がいいっつうんだから、いいんだろうけど……
そう思いながら部屋を見渡すと、本棚の上に置かれた1つの写真立てが目に入った。
「……?」
何故か気になってよく見てみようと立ち上がったその時だった。
「これ、もう捨てようと思ってたの」
マグカップを2つ持った繭莉がその写真立てをぱたんと伏せた。
「大事な写真なんじゃねぇのか?」
「ううん、もう……大事じゃない」
そう言った横顔が、どこか寂しげだった。