第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
……マジかよ……
3か月先まで予定が埋まっているのを目の当たりにして、自分がクソ忙しいヒーローの1人であったという事を思い出す。
スマホを見つめてピクリともしなくなった勝己を見て、相澤は少しばかり彼が心配になった。
「どうした?爆豪」
「……いや、」
3か月……そんなに間が空いたら、繭莉にだって何が起こるか分かったもんではない。
もしかしたら、地元の男に言い寄られて……とか妄想すれば幾らでも最悪な結末が思い浮かんでしまう。
……逆に、今行くか……?
この犯罪が増えそうな年の瀬にそう思ってしまうのもアレだが、丁度というか何というか、年末年始は特に重要な予定がなかった。
犯罪は、サイドキックや他のヒーローに任せれば何とかなるが、流石に自分の恋愛は他の人間に任せる事は出来ない。
「俺……行くわ、青森」
相澤はそうか、と言う代わりに勝己の背中をポンと叩いた。
それから、3日後。
善は急げとばかりに、勝己は電車に揺られていた。
車窓から、青森のどこかノスタルジーを感じる風景を眺めていた。
駅を通り過ぎる度に、どんどん雪深くなっていく。
青森のどこに繭莉が居るのか、ぶっちゃけ知らない。
会えるかどうか……ここは奇跡に身を委ねるしかなかった。
だけど、この電車で終点まで行ったら何となくだが彼女に会えそうな気がしていた。
『次は、終点―――』
そのアナウンスが流れてから暫くして、終点の駅に着いた。
電車から降りると、そこはかとない寒さが襲ってくる。
「寒っ……」
さて。
ここからが問題だ。
この、雪が積もりまくった道を右に行くか左に行くか。
考えあぐねていると、横断歩道の向こう側に見慣れた人物を発見してしまう。
奇跡とは意外と起こるもんで、繭莉を速攻で見つけてしまった。
しかし、彼女はまだこちらに気付いていなかった。
下を向いて、寒そうに手をすり合わせている。
やがて、信号が青になった。
信号を確認しようと顔を上げた繭莉と、目が合った。
こちらに気付くと、相当吃驚した顔をしていた。
が、次の瞬間彼女は勝己に背を向けて一目散に逃げだした。
くっそ、アイツ逃げやがった!
「おい、待てよ甘井!」