第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
間に合え、間に合え……!
それだけを思いながら、只管足を前に出す。
車で行けば少しは早く着くだろうとか、そういう考えは今の勝己からはすっぽ抜けていた。
兎に角、走った。
「はぁっ、はぁ……」
漸く駅前に着いて、上がった息を整える。
駅に出入りする人々は、どこか楽しそうにキャリーケースを引いていたり、壁に寄りかかって誰かを待ちわびていたり、色々な表情を浮かべている。
果たしてこんな浮かれた気分の奴等の中に、繭莉は居るのだろうか。
駅の構内に足を踏み入れると、向かいからよく知った人物が歩いてくるのが見えた。
「相澤、先生」
「……爆豪」
示し合わせた訳でもないのに、こんな所で会ってしまうのは仕方のない事かもしれない。
2人が会いたいと思っている人物は、恐らく一緒なのだから。
「遅かったな」
先に口を開いたのは相澤だった。
遅かった。
その言葉で、もう繭莉には会えないと勝己は悟った。
「いや、そういう俺も遅かったんだが」
「それって、どういう……」
「全く違う時間を教えられたってところだな……すっかり騙された」
つまり、彼女は誰に見送られる事もなく、1人で帰る事を選んだのだ。
らしいと言えばらしいが、寂しすぎやしないだろうか。
「アイツ、何でそんな事……」
「さぁな……色々考えたんだろ、彼女なりに」
結局、気持ちを確かめるどころか会う事すらできなくなってしまった。
そうしたら、この気持ちはどうすればいいのだろう。
この……
繭莉を想ってしまっている、この気持ちは。
「アイツの、実家って……」
「遠いぞ」
「どこなんだ?」
「青森だ」
なんだ、日本じゃねぇか。
そんな神妙な顔で遠いっつうから、海外かと思ったわ。
「ンなとこ、行こうと思えば行けんじゃねぇか」
「行く気か?」
「ったりめーだろ」
こうなったら、行ける所まで行ってやる。
このまま、俺から逃げれっと思うなよ。
何考えてんだか知らねぇが、俺をこんな気持ちにした責任はしっかり取って貰うかんな。
そんな事を考えながらスマホを取り出して、予定管理アプリを開く。
今後の予定がびっしり詰まっていて、ちょっとした絶望を覚えた。