第1章 限定って言われると欲しくなる(ホークス)
「おはよー」
「ねぇねぇ、昨日の配信見たぁ?」
「見た見た!あれ面白かったよね!」
「あ、おはよう繭莉!昨日のあれ見た?」
私は甘井繭莉。
普通の高校生。
「おはよ。んー……見てたんだけど、途中で寝ちゃって……」
私が机に鞄を置きながらそう言うと、友達がキャーっと黄色い声を上げた。
「え!?繭莉寝落ちしたの!?展開ヤバすぎて寝れなかったんだけど!ね、麻弥!」
「そうそう、この2人くっつくの?くっつかないの?ってハラハラしたんだからぁ!何で寝たの?繭莉!」
肩をガクガクと揺さぶられて、朝で若干眠かった目が覚醒してきた。
「そ、そうね……いい感じになる所までは、見てたんだけど~……」
私が言葉を濁すと、亜有佳が「しょうがないなぁ」と溜息を吐いた。
「後で見逃し配信、見よ!ね?」
「あー……うん、分かった」
周りの子は皆、例の配信系恋愛リアリティーショーにハマっている。
でも、私は正直な事を言うとちょっとまだそういうのは分からない。
私が好きなのは……
「あ、それよりさぁ亜有佳、麻弥!コレ、昨日買った!可愛くない?」
鞄の中から、じゃーんと出したのは最近SNSでバズったリップ。
私は、恋愛リアリティーショーを観るよりもメイク動画を見ていたい位メイクが好きだ。
メイクで顔盛れてりゃ大抵の事は何とかなる。
そう、思っちゃってる。
「あ、それ可愛いよね!私も欲しかった!」
「売ってる店やっと見つけたんだ~。学校終わったら行こっか」
「ホント?連れってって!」
会話が一段落した所で、担任の先生が教室に入ってきた。
「はい、席ついてー。ホームルーム始めるよ」
退屈な一日が、また始まる。
昼休み。
仲のいい子達と席をくっつけてお弁当を開けていると、何やら外が騒がしい。
「何だろね……外」
私がお箸の箱をパカっと開けながら言うと、亜有佳達も気になっていたらしく、窓の外に目をやっていた。
「何か、キャーキャー言ってない?」
「芸能人の、サプライズ登場とか……」
「麻弥ぁ、そんな……テレビじゃないんだから……」
続きを言おうとしたその時。
ヒュンっと、でっかい鳥が窓の外に見えた。
「でっか……鳥……」