第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
「爆豪お前……犯すって、」
「早く、行ってくれっつってんだ」
これ以上相澤の前で醜態を晒したくなくて俯いた。
不覚にも、泣きそうになった。
「行けるわけないだろ」
相澤が、勝己の頭にポンと手を置いた。
「確かにお前は人としてやっちゃいけない事をしたよ。……でも、お前も傷ついてるんだろ?」
勝己は、はっとした。
傷ついてる?
どこをどう見たら?
俺が……傷ついてる?
「俺は、そんな生徒をほったらかすような事は、出来ない」
相澤からしたら、勝己はどこまでも大事な生徒の1人だった。
見放せない、大事な。
「甘井さんの所に行くのは……そうだな、お前を何とかしてからだ」
くしゃっと頭を撫でられて、目の奥が痛くなる。
「俺……焦った……嫉妬、してた……先生に」
「そうか」
「そんで、無理矢理自分のモンにしたくて……っ、アイツ、傷、つけて……」
痛くなって熱くなった目の奥から、じわりと涙が滲んだ。
「そこまで分かってるなら、もう大丈夫だ」
頭を撫でていた手を、肩にポンと置いた相澤。
「事務所まで、送ってってやろうか?」
「……いらね……」
鼻をずっと啜った勝己を見て、ふっと顔を緩めた。
「……じゃあ、この街の平和はお前に託すぞ、大・爆・殺・神ダイナマイト」
「っ……余裕だわ」
少し覇気に欠けるが、いつもの調子に戻ったのを確認して相澤は繭莉がまだ居るであろう店の方向に向かって歩き出した。
相澤の優しさは、勝己にも痛い程伝わっていた。
どんな気持ちで繭莉の所に行くのだろうと思うと、慰められて少し嬉しかった半面、複雑な気持ちになる。
しかし彼女の事はもう、相澤に任せるしかないと思った。
繭莉が相澤に泣きつくなら、それもアリだろう。
あわよくば、そうして欲しいとすら勝己は思った。
相澤の腕の中で、安心しきる繭莉を見るのだっていい。
どう頑張ろうが所詮自分には、出来ない芸当だから。
無理矢理奪ってやろうとか思っていた先程とは考えがまるで別人なんじゃないかと、自嘲した。
でも、これも勝己の素直な気持ちの一つであることには変わりない。
「っあー……行くか……!」
今は、自分に出来る事を。
そう思いながら、勝己は歩き出した。