第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
それから、一週間が過ぎた。
勝己は、事務所で色々溜まっていた事務処理をしていた。
すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「ダイナマイト、お客さんっすよ!」
ドアの向こうから最近入ったサイドキックの声が聞こえたが、今日は来客の予定など1つもなかった。
誰だぁ?この忙しい時に。
「どこのどいつだ!」
勝己は手を動かしながら叫んだ。
「何かぁ、可愛い子っすよ!カノジョですか?」
「ンなもんいねぇわ!誰だって、聞いてんだ」
すると、サイドキックが誰かと話している声が微かに聞こえた。
「あ……ジーニスト……そうっすか、ジーニストのサイドキックの方ですって!」
勝己の手が、ピタッと止まった。
思い当たる人物は、1人しかいなかった。
「わぁったよ、入れって言っとけ!」
そう叫ぶと、程なくして部屋のドアが開いた。
「あの……お邪魔します……すみません、お忙しい所に……」
遠慮がちに言ったその声に、勝己の心臓が早鐘を打った。
思わず椅子から立ち上がる。
「……お前……」
ドアを開けたのは、繭莉だった。
「ジーニストが、先輩の怪我……良くなってるか、見て来いって……」
どこか勝己と距離を取って話す繭莉に、あんな事をしてしまったししょうがないかと諦めた。
「そこ、座っとけ」
デスクの前のソファを指差すと、彼女は大人しくそこに腰掛けた。
「もう、治ってる」
怪我も治った左腕を見せると、安心したように息を吐かれた。
「よかったです」
繭莉の笑顔を見るのが、辛かった。
勝己は、謝るなら今しかない……今を逃せばもう、繭莉は二度と自分を見てくれないかもしれないとすら思った。
「っ、甘井」
思えば、こんな風に呼んだのは意外と初めてかも知れない。
いつものように潤んだ瞳で見上げられて、心臓の音が邪魔だと思う程うるさくなる。
「この間……悪かった」
素直な謝罪に、一瞬繭莉は目を丸くしたが、すぐに視線を自分の手元に移した。
「……わ、私……」
そう切り出した彼女の視線は、揺れていた。
「あんな事、されたのに……やだって、思った……はずなのに……」
潤んだ瞳が、もう一度勝己を見上げた。
「あの日から私、先輩の事しか考えられない……」