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たまのケージ【ヒロアカ】

第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)


 店から少し離れた所で、立ち止まる。

 走って上がった息を整えながら、勝己は自分を責めた。

 俺は、最低な人間だ。

 アイツ、嫌がってたじゃねぇか。

 そんな人間を見て逆に興奮するとか、どうかしてる。

 「ねぇ、ダイナマイトぉ」
 後ろから、ヒーロースーツをくいっと引っ張られて我に返った。
 振り返ると、少年がキラキラした目で勝己を見ていた。
 「握手して!あくしゅー!」
 「……あ……」
 目線を合わせるように屈んで、手を差し出す。
 「わー、ありがとう!」
 ブンブンと手を振られて、勝己は内心複雑だった。

 もし、あのままアイツと最後までしてたら……?

 この手は、握れなかったかも知んねぇ。

 それは、罪悪感で?……よく、分かんねぇけど……

 いや、最後までしてなくてもやべぇ事には変わりないか。

 「じゃあねー、ダイナマイトー!」
 少年を見送って、軽く溜息を吐く。
 立ち上がろうと思ったその時だった。
 「お、ちゃんとファンサしてんのか」
 上から声が降ってきて、見上げるとそこには相澤が立っていた。
 「……ンだよ、帰ったんじゃねぇのか」
 「いや……甘井さんなんだが」
 
 甘井。

 その名前に、胸がドクっと音を立てた。

 「さっき、言い忘れた事があって電話したんだが、出なくてな……気になって、戻って来た」
 
 さっきの電話、相澤先生かよ。
 鋭いんだよ、何か、色々……

 「忙しいんじゃねぇの?」
 適当な事を言ってやり過ごそうと思ったが、そうもいかなかった。
 「爆豪、お前もさっき店に居たろ。何か、知らないか?」
 「……俺、」
 「どうした?彼女と何かあったのか?」
 中々に核心を突く質問をされて、勝己はもう自分の犯した罪を心の中に仕舞っておく事も辛くなってしまっていた。
 誰でもじゃなく、相澤に聞いて欲しかった。

 ヒーローと言えど、担任の前ではこんなにも心が脆くなるもんなんだろうか。

 「……俺……アイツの事……犯し、かけた……」
 相澤の目が、僅かに見開かれる。
 「っ、だから……早くアイツん所、行ってやってくれよ……」

 本音だった。

 早く、優しく抱きしめてやって欲しいとさえ思った。

 繭莉を幸せにできるのは自分ではない。


 俺じゃ、アイツの事を泣かす事しか出来ねぇ。

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