第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
「大丈夫か、ダイナマイト」
「……これ位、余裕っス」
ここは、ベストジーニストの個人事務所の一角。
今日は偶々大・爆・殺・神ダイナマイトとチームアップを組んで任務に励んでいたが、不覚にも戦闘で落ちてきた瓦礫でダイナマイトが怪我をしてしまった。
とは言っても、命に何ら別条はない。
一応、ジーニストは病院に行く事を打診したが、前記のように言われたのでまぁ大丈夫なんだろうとここまで連れてきた次第である。
「取り敢えず、その怪我を何とかしなければならないな」
「だっから余裕だって……!」
昔、ジーニストの元でサイドキックとして在籍していたダイナマイトこと爆豪勝己は、頼れる?……まぁ、頼れる先輩であるジーニストの前でも虚勢を張る事を忘れない。
ったく、余裕だっつってんのに心配しやがって。
そろそろ後輩ヒーローとしてではなく、同等に見て欲しい……そんな事を思っていると、ガチャっと部屋の扉が開いた。
「ジーニスト、包帯とか、持って来ましたけど……」
そう言いながら、おずおずと部屋に入ってきた人物を見て勝己はドクっと胸を高鳴らせた。
甘井繭莉。
彼女は勝己とは入れ替わりでジーニストのサイドキック入りをした。
ヒーロー名は……何かありきたりなネーミングだったので、いつも忘れてしまうんだが。
勝己は、正直な所ジーニストの事務所で繭莉を見た時から、何故かは分からないが彼女に惚れていた。
まぁ、一目惚れというのは大体にして何故かは分からないものである。
繭莉はずば抜けて可愛いとは言えないが、整った顔立ちはしている。
兎みたいな、いつも潤んだ瞳。
サラサラの藍鼠色の髪。
いつも、少し上気したような肌。
細くて、抱きしめたら折れそうな身体。
ヒーローらしからぬ、自信なさげな表情。
それらの全てが、勝己の保護欲求をかき立てた。
「先輩、ちょっと痛いかもですけど我慢してくださいね?」
彼女はいつも、勝己の事を『先輩』と呼ぶ。
まぁ、確かに先輩なのだから間違いではないのだけど。
「うぅっ、痛そう……」
勝己の腕を消毒しながら繭莉が呻いた。
「普段、コイツにどんな教育してんスか」
全くヒーローとは思えないビビりように、勝己はジーニストにそう聞いていた。