第1章 限定って言われると欲しくなる(ホークス)
私が深々と頭を下げると、警察のお兄さんはパイプ椅子によいしょと座り直した。
「家族の人にね、迎えに来てもらおうと思うんだけど……連絡先、教えてくれないかな?」
「……あの、親、離婚してて……どっちにも、連絡して欲しくないです……」
「そうなんだ。でも、来て貰わないとなんだよ?こっちも。お父さんとお母さん、どっちがいい?」
どっちにも、来て欲しくないなぁ……
こんな醜態、晒すのはちょっと……
私が考えあぐねていると、部屋の外で誰かが談笑する声がぼんやり聞こえた。
そして、その声は段々と大きくなってくる。
部屋のドアが、ガチャリと開いた。
「どうもすんませんね、刑事さん。そのコ、俺のいとこなんスわ。夜出歩くなって、言ったのに」
入り口の壁に寄りかかっていたのは、あんなに探しても見つからなかったホークスだった。
「……ほ……」
「繭莉。ケーサツに迷惑かけて、なんしよーと」
なんで来てくれたのかは、分からない。
しかも、バレバレの嘘までついて。
嬉しいけど、それと同じ位今は恥ずかしい。
「ご、ごめんなさい……」
泣きたくもないのに、涙が出てしまう。
それを見た警察のお兄さんは、ちょっと安心した表情を見せて私に向き直る。
「よかったね、お迎え来て」
am1:20、釈放。
私は、頭を下げて平謝りした。
「あの、ほんとに、ごめんなさい……迷惑かけて、嘘まで……」
「あんな嘘で帰して貰えるなんて、思わなかったけどね」
そう言ってへらっと笑うホークス。
「えっと……何で、私がここに居るって……分かったんですか……」
「んー?……秘密」
ポケットに手を突っ込んで歩く後ろ姿を見て思った。
なんか……
ぎゅって、抱きつきたい……
「じゃ、夜中だから気を付けて帰ってね、繭莉ちゃん」
突然のお別れ宣言をして、地面をトントンと蹴ったホークス。
やだ、行っちゃう。
まだ、何も言えてない。
おねがい、まって……!
気付けば、彼の腕を掴んでいた。
「もうちょっと、一緒に……いてよぉっ……!」
「!」
少し吃驚した表情をしたホークスだったけど、すぐに真面目な表情に変わった。
「いいよ、一緒に居てあげる。けど……どうなっても、知らないよ?」