第8章 恋人ごっこ(ホークス)
「参考までに教えてくださいよ。どうやったらああいうタイプ、落とせるんですかね?」
冗談のつもりで尋ねた。
荼毘は、何故かチッと舌打ちをした。
「知るか。俺に聞くんじゃねェよ」
「いや~、似たタイプだと、思ったんスけどね」
「……チッ」
再び、舌打ちをされる。
……結局、何言ったって舌打ちするんじゃん……
「お、ホークス!戻ってたのか!ちょっと教えて欲しい事あんだけど!」
「トゥワイス」
突然現れた分倍河原のお陰で、ちょっと助かった。
「ま、精々足掻けよ。……多分落ちねェと、思うけどな」
そう言うと、荼毘はどこかに行ってしまった。
荼毘もそうだけど、うらら……
手が届きそうだと思ったら、煙みたいにすり抜けて。
全く掴めなくて、ホント困る。
どうやったら……
「ホークス?」
分倍河原に呼ばれて、我に返った。
「あぁ、何でしたっけ」
取り敢えず、私情は心の奥に仕舞って仕事に専念する事にした。
日付が変わって、深夜。
何となく眠れなくて、夜の街の上空を飛んでいた。
適当なビルの屋上に降りて、街の明かりをぼんやり眺める。
考えてしまうのは、うららの事ばかりだ。
彼女に会った日は、次の日まで大体こうなる。
思い切ってこの関係を終わらせてしまえば、こんな気持ちになる事もないと思う。
『……また、会ってくれる?』
うららの寂しそうな顔を、思い出してしまう。
「……っあー……!」
くしゃ、と自分の髪を掴んだ。
終わらせらんないでしょ、今更……
だって、失う方が怖いとか、思っちゃってるし。
俺が縋りついてれば、うららは受け入れてくれるって分かってる。
だけど、うららにとってそれは好きとかそういうんじゃなくて、寂しさを紛らわす為なんだっていうのも分かってる。
何がそんなに、寂しいんだろ。
俺を選んでくれたらそんな思い、させないのに。
……なんて……
「だから、荼毘に気持ち悪いって言われんのかな……」
と、自嘲気味に呟いた。
その時、ポケットの中のスマホが震えた。
「っと、」
ポケットからスマホを取り出し、プレビューだけチェックする。
『ホークス、今すぐ飛んできて』
うらら……