第8章 恋人ごっこ(ホークス)
そう言うと、パッと笑顔に戻る。
「ホント?嬉しい」
別れ際のいつものやり取りだ。
ホントに、嬉しいって思ってんのかな。
まぁ嘘でも、言ってくれるだけマシか。
「シャワー、行っといで。お迎え来ちゃうよ」
ちゅっと触れるだけのキスをする。
「ふふ、ホークスの甘やかし」
ひらひらと手を振りながらお風呂場の方へと歩いていくうららを同じように手を振って見送る。
ザー……とお湯の流れる音を確認した所で、軽く溜息を吐く。
何なんだろ、俺達の関係って。
周りから見たら、セフレ?
……そうだよなぁ……
こんな無謀な恋をやめたいと思う事もあるけど、好きなもんは好きでしょうがないとも思う。
ま、なるようにしかなんないか。
そう思いながら、うららの部屋を出た。
「ただいまー」
俺は、敵連合のアジトに戻っていた。
公安の命令とは言え、スパイなんてどうにも居心地が悪い。
「お、やっと帰ってきやがったかNO.2」
「……荼毘」
「スケプティックのお陰で全部丸聞こえだ」
荼毘が、俺の近くまで寄ってくるとスンと鼻を鳴らした。
「煙草と女の匂い、混ざって臭ェんだよ」
……ま、そりゃこうなるわな。
「解放思想の浸透とやらはどうしたんだよ、あ?」
「まぁ、ガンバってますよ?」
そう言った所で、この男が信じる訳もない気がする。
「女ン所行くのが、解放思想の浸透に繋がんのか?お前、馬鹿だろ」
俺にこんなものをつけたスケプティックを心底恨んだ。
もう、こいつ等からしたらどうでもいい情報がモロバレじゃん。
「偶々でしょ、今日は。いつもはこれでも、ガンバってるんだけどな」
「あっそ、興味無ェなァ」
「でしょうね」
誰も信じない男、荼毘。
信じないという事は、誰も好きにならないという事なんだろうか。
何となく、うららと似てる気がする。
「NO.2ヒーローが、あんな女にだだハマりしてるとはな……きめぇ」
「人の好みに口出さないで下さいよ」
「きめぇって言っただけだろ」
……気持ち悪い、ねぇ……
「まァ、ああいうタイプは人に心なんざ、開かねェよ。さっさと他のに乗り換えた方が、利口だぜ」
……乗り換えられてんなら、もう乗り換えてるって……