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The usual one【ヒロアカ中心】

第8章 恋人ごっこ(ホークス)


 「さっき、言ったじゃん。賞味期限切れるまで、うらら続けるって」
 「あ、そう……けほっ、それより煙草って、なんか得する?」
 すると、うららは何か考えるようにゆっくり煙を吐き出した。
 「んー……得ってないかな。最近高いし」
 「止めらんないの?」
 もう、吸う所が少なくなっていた煙草を灰皿に押し付けながら彼女は言う。
 「誰の前でも吸ってるワケじゃ、ないよ」
 そして、煙草なんて全く似合わない、可愛い笑顔で言った。

 「ホークスの前でしか、吸わないよ。今は」

 そうやって、その気も無いのに特別みたいなのを匂わせてくるから降参したくなる。

 それより今はって、何だ、今はって。
 引っかかるなぁ。

 どこの誰とも分からない誰かに嫉妬しかけた時、うららのスマホが鳴った。
 「はぁい。……あ、うん、うん……分かったぁ、久しぶりに会えるの、嬉しいなぁ」
 
 ……雰囲気的に、男だな……

 通話を終えたうららに後ろから腕を回す。
 「久しぶりに、誰に会うの?」
 「ん?大学の、先輩」
 「ホントに嬉しいって、思ってる?」
 「んー……?うん……?」

 また、そうやってはぐらかす。

 うららは、誰の事も好きにならないし、誰の事も嫌いにならない。
 
 だから、来るものも拒まないし去る者も追わない。

 寂しがりのくせに、随分と淡白なもんだ。

 「そいつの事、好きなの?」
 「ううん!」

 即答かよ。

 「だって、皆うららとシたいだけなんでしょ?私だって、誰かといたらその時は寂しくないし?ウィンウィンって感じで、いいんじゃないかなぁ」

 うららに言い寄ってくる男のどれだけが、本気でハマってんのかは知らない。

 というか、俺もその皆の中にカウントされてんのかと思うと若干腹が立つ。

 こんなに、好きなのになぁ。

 「うらら、」
 続きを言いかけた時、うららはスマホの時計を見て慌てて立ち上がった。
 「やばっ、シャワー浴びて仕事の準備しなきゃ!あ、帰るんだったら鍵、いつもの所入れといて!」
 「……はいはい」
 「ねぇ、ホークス」
 「ん?」

 「……また、会ってくれる?」

 いつも、彼女は別れ際にそう言う。

 しかも、寂しそうな顔で。

 「いいよ、いつでも会ってあげる」
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