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The usual one【ヒロアカ中心】

第8章 恋人ごっこ(ホークス)


 「ホークス、会いたかったぁ!」
 そう言って、いつも通り俺の腕の中でふにゃふにゃと甘えているのはうらら。
 
 だけどこのうらら……一筋縄ではいかないから、いつも困る。
 「うらら、いつになったらホントの名前で呼ばせてくれんの?」
 頭を撫でながら尋ねると、「んー……」と渋りだす。

 いつもの事だ。

 「一生、呼ばないで」
 「何で?繭莉って、いい名前じゃない」
 すると、彼女の甘ったるい表情は一変して、不機嫌顔で腕をパシっと掴まれる。
 「その名前で呼ばないで。……ホークスだって、啓悟って呼ばれんの、嫌いでしょ」

 ……確かに。

 お互いの本当の名前は知っていた。

 けれど、彼女は頑なにうららという名前を捨てたがらない。

 「私、一生うららでいい」
 「じゃあ、キャバ嬢辞める気も、ないんだ」
 うららは、俺の胸元に顔を埋めて「うん」と言った。
 「うららの賞味期限が切れない限りはね、続けるつもり」
 「お酒、飲まないのに?」
 「最近はそういうのも許されんの。……たまに、飲むけど……ていうか、こんな話……どうでもよくない?」

 うららは、自分の話もあまりしたがらない。

 かと言って、人の話を掘り下げて聞いてくるタイプでもない。

 要は、自分も含めた人間というものに興味がないのかもしれない。

 「話す事無くなったら、つまんないでしょ」
 「ううん、いいの」
 うららが、俺のゴーグルをカチャリと外した。
 「ホークス、えっち巧いもん。話さなくたって、何とかなるでしょ」
 「……そりゃ、どうも」
 俺の頬に顔を摺り寄せてきたので、顎を掴んでキスをする。
 「……んっ……」


 いつ出会って、いつこんな関係になったかは……正直忘れた。
 それ位昔だったのか、何なのか。

 だけど、うららもとい、繭莉という沼にどっぷりはまってしまっているのは事実だ。

 彼女といると、本当の自分をさらけ出さなくて済むから楽だった。

 他の女みたく何でもかんでも、教えて!と迫ってくる事もないし。

 ……だから、うららも自分をさらけ出すことはないのか……ま、仕方ないか。

 たまに会って、こうして身体を重ねる。

 こんなの、恋人ごっこ以外の何物でもなかった。
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