第1章 限定って言われると欲しくなる(ホークス)
「別に、ちょっと中断されただけじゃん。何そんなキレてんの?またすればいいだけの話だと思うけど」
……ごもっとも……今日、2回目だ……
「ホークスの連絡先、知らないの?」
「……知ら、ない……」
そうだ。
私、あのひとの事、何にも知らないんだ。
連絡先も……本当の気持ちも。
「……はぁ……そうね……今度会ったら、謝る……多分」
今度会ったら、もうちょっと優しくしたげよう。
キレちゃってごめんねって、言ってみよう。
うん……そうしよう。
私は、そんな事を思っていた。
次の日。
「あれ?」
私は、購買部で不慮の事態に遭遇した。
ない。
あの、ゲロ甘限定缶コーヒーが売ってない。
「おねーさん、あの缶コーヒー……」
私が尋ねると、お姉さんは申し訳なさそうに笑った。
「ごめんなさいねぇ。あれ、もう終売なんですって。だからもう、置いてないのよ」
缶コーヒーの切れ目が縁の切れ目。
これで、完璧にホークスと私の縁は切れた、気がする……。
連絡先も知らなきゃ、唯一彼がここに来る理由も無くなった。
嘘やん。
こんな事、ある……?
「そうですか……」
教室への帰り道、トボトボ歩きながら考える。
こんな事になるなら、他の子達みたいに『ホークス、好き♡』とでも言っときゃよかったんか。
え、好き?
私、あのひとの事、好きなん?
あれ……
思えば、そうだよね。
恥ずかしくて名前で呼べないとか、小学生か。
……好き、だったんだ……
綺麗な瞳も、身体の温もりも、何もかも。
好きだったんだ……!
「気付くの、おっそ……」
いつの間にか立ち止まっていた私は、1人呟いた。
今日は日曜日。
私は、駅の新幹線乗り場近くの自動販売機コーナーにいた。
その自販機コーナーは、全国津々浦々のご当地飲料を取扱ってるとかいう、奇跡のコーナー。
奇跡がこの世に存在するなら、ここにあの缶コーヒーが売ってるかもしれない。
そう、思ったのだ。
「うーん……」
ここの存在を知ってたら、もしかしたらホークス来るかも……そんな淡い期待を描きながら片っ端からあの缶コーヒーがないか、チェックしていく。
「あるわけないかぁ……ドラマじゃ、あるまいし……」