第7章 夢中(相澤消太)
2人で並んで歩いていると、向かいから消太の友達の山田さんが歩いてきて、こちらに気付くとよっと手を挙げた。
「よぉよぉ繭莉ちゃん!どうした?雄英なんか来て!」
「山田さん、お久しぶりです!えと……消太に呼ばれまして……」
「山田、エリちゃん見かけなかったか?」
消太が尋ねると、山田さんは「おお」と言った。
「エリちゃんなら、さっきA組の寮の方に歩いていくの見たぞ」
「分かった。行くぞ、繭莉」
「繭莉ちゃん、また飲もうぜ!」
「あ、はい!ではまた!」
山田さんにお辞儀をして別れる。
先に歩いていた消太に追いつこうと早足で歩き始めたけど、いつの間にか歩幅を合わせられていて相変わらず何だかんだで優しいなぁなんて思う。
「消太、エリちゃんって?」
そう聞くと、消太は顎に手を当てて少し考えるしぐさを見せた後、口を開いた。
「まぁ……色々あって、雄英で預かってる子だ。その子の髪を切ってやって欲しい」
「分かった」
エリちゃん、かぁ……どんな子なんだろ?
私がそんな事を思っている内にA組の寮に着いたらしく、消太が足を止めた。
「おじゃましまぁす……」
そっと扉を開けると、ソファに腰掛けて談笑していた何人かの子達が一斉にこちらを見た。
「あ、相澤先生!……と……?」
「緑谷、丁度良かった。エリちゃん、来てないか」
「あ!来てます!僕、ちょっと呼んできますね」
そう言って、緑谷と呼ばれた男の子はぱたぱたと走っていった。
それを見送った子達の視線が再び私に集まる。
「相澤先生、そっちの美人誰すかぁ?」
この子金髪で、チャラそう。
「もしかして、エリちゃんを引き取ってくれるとかかしら」
この子、蛙っぽくてなんか、可愛い。
「そいつはよかったっすね!エリちゃん喜ぶぜ!」
すっごい、赤だなぁ。この子、ヘアセットする時、毎回ワックス1個丸々使ってそう。
「あ、あの……私、そういうのでは……」
私が首を横に振ると、その場にいた全員が不思議そうな顔をした。
「エリちゃんの髪を切って貰おうと思って連れてきた」
消太がありのままを説明すると、ピンクの子が「はいはーい!」と手を挙げた。
「その人と相澤先生、どーいう関係ですかぁ?もしかしてカノジョ!?」
その質問に、全員が色めき立つ。