第7章 夢中(相澤消太)
「はぁ、着いた……雄英、でっかいなぁ……」
消太が校門まで迎えに来てくれるって言ってたから、ここで待ってよう。
少しの間、校門の前で待っていると向こうから消太が歩いてくるのが見えた。
いつもと変わらない消太に会えるのが、何より嬉しかった。
「久しぶり、消太!」
そう言って駆け寄ると、彼の顔が若干緩む。
「繭莉悪いな。最近、碌に連絡も出来なかった」
消太の手が、私の頬に触れた。
「元気そうだな。……よかった」
触れられるのが久しぶりすぎて、胸がドキンと高鳴った。
「消太も、元気だった……?」
「ああ」
突然、消太にぎゅっと抱きしめられた。
「ちょ、誰か来たら見られちゃう!だめです、相澤先生!」
肩をぐっと押すけど、全然ビクともしない。
「俺はお前の先生じゃない」
そう言われて、首元に顔を埋められる。
「っ、消太……」
身体がじわっと熱くなって高鳴った胸がうるさい。
もう……好き……
「繭莉、最後に会った日の事覚えてるか?」
え?
「なんか、あったっけ……?」
「お前、あの時生理だったろ」
うっ!
女に向かってそういう事、言うなんて……っ……
「それから何だかんだで会えなかったからな」
そ、それってつまり……?
「滅茶苦茶、溜まってる」
「た、たまっ……!」
自分の勤務先で、何つー事言ってんの……!
「今夜、覚悟しとけ」
「も、もう!それっ、セクハラ!」
「彼女に向かってセクハラもクソもねーだろ」
顔を上げた消太と目が合ってしまって、鼻先が触れる程顔を近づけられる。
こんな所でっ……キス……!
そう思った瞬間、後ろから「相澤くん」と声が聞こえた。
思わず声のした方を見ると、ネズミの姿の校長先生がちょんと立っていた。
「そういう事は、2人きりの時にするのさ。それよりエリちゃん、待ってるんじゃないのかい?」
「……ああ、そうでしたね」
消太は渋々といった感じで、私から身体を離した。
校長先生に、見られた……大丈夫なの?……なんか、色々。
「じゃあ、行くか」
既に何事も無かったかのように消太が歩き出したので、私は甘い余韻を引きずったまま彼の後を追いかけた。