第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
「そうやって、そこそこ可愛い癖に自己評価が低い所。なんか分かんねぇけど、すっげぇ、護ってやりたくなる」
そ、そうなんだ……
自己評価……相澤先生も、そんな事言ってたような……
「……私、こんなだし……」
「ああ」
「好きって言われたら……すぐ、運命かもとか、いい歳して女子高生みたいな事、思っちゃうし……」
「知ってる」
「切島くん、そんな私で、いいの……?」
「お前が、いいんだよ」
そう言った切島くんが、私の腕を掴んで立ち上がると、それにつられて私も立ち上がった。
すると、ぎゅっと抱きしめられる。
「……切島くんの腕、あったかい……」
こんなにあったかくて優しい腕の中を、私は知らなかった。
思わず、切島くんの背中に腕を回した。
「甘井」
「……ん……?」
「俺の、勘違いじゃねぇよな?」
「なにが……?」
「お前が俺の事、好きかもとか……」
そんなの、もう……
「あんな事言われて、こんな事されたら、私……好きになっちゃう……」
「はは……そっか!お前、チョロいな!」
私を抱きしめたまま、切島くんが笑った。
「……うっ……」
返す言葉が見つからない……。
「でもな、」
切島くんの腕に、ぎゅっと力が籠った。
「覚えとけ。……もう、誰んとこにも行かせねぇよ」
「き、切島くん……」
「俺の事だけ、見ててくんねぇか……頼むから」
私がずっと求めてたもの。
やっと、見つけた。
こんな所に……あったんだ。
「うん……なんか、ごめん……色々……」
「ごめんって、これの事?」
すぅっと首筋を指でなぞられて、赤く残った痕の所で指がぴたっと止まった。
「……う……」
相澤……あいつ……っ……
「誰に付けられたか、知らねぇけど……見た瞬間、すげー嫉妬した、そいつに」
そう言った切島くんが、私の手を引いて歩き出した。
「切島くん?あの、どこ行くの……」
「その辺の、ラブホ」
「らっ……!?な、なんで、」
「今すぐお前、俺のモンにしてぇ」
そんな事を、男の人に言われるのは初めてだった。
切島くんは、いとも簡単に私の初めてを奪ったり、知らない事を教えてくれる。
私、このひとになら全部、あげられる。
そう、思ってしまった。