第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
「そんな、えと……好き、とか……」
「ああ、好きだ」
切島くんが、真っ直ぐ私を見て言った。
その表情に、ドキンと胸が高鳴った。
……んだけど、その瞬間、もう1人の私が再び牙をむいてきた。
いや、待てよ……
ドキドキしとる場合かっ!
そうやって絆されたら終わるって、学んだばっかじゃないか!
どうせっ、私の周りにはクズ男しかいないんだ…っ……!
「切島くん……すっごく、嬉しいんだけど……その、ね?私……ちょっと今、素直な目で男の人、見れないっていうか……」
酔いが回ってきたのか、喋っている事が滅茶苦茶な気がした。
「ホント……クズしか寄って来なくてさ……皆、溜まってるんだって……どーせ皆、ヤりたいだけなんだ……っ……!」
私は、その場に座り込んだ。
愚痴と涙が止まらなくなってしまって、どうしようもない。
はぁ……
こんなの、切島くんだって、困っちゃう……
「……何言ってんのか、さっぱり分かんねぇけど……」
ですよね!
「あん時さ、俺が電話出なかったら……」
切島くんが、私の前に座り込んだ。
「甘井は、今こんなに泣いてなかったんだよな?」
そう言って、私の頭をそっと撫でた。
「あーぁ……俺、すっげー後悔してる」
「な、なにを……?」
「あん時、あのままお前抱かなかった事」
思わず顔を上げると、今度は切島くんが下を向いた。
「憶測でしか言えねーけど、そうしてたら運命、変わってたんじゃねぇかって思って」
「……う……」
「甘井、俺はさ、お前の目にどう映ってんだ?」
私の……
どう、って……
「出来れば、お前がさっき言ってたクズと同じにはなりたくねぇけど」
「……ごめん、クズの話は忘れて……」
「忘れらんねぇよ。そいつらの所為でお前今、泣いてんだろ?……俺は絶対ぇ、甘井の事泣かせたりしねぇ」
切島くんが、また私を見つめてくる。
その目は、きっと嘘偽りのない目だった。
「切島くん……私、チョロいよ……?だって今、切島くんに色々言われてさ、ちょっとコロッといきそうになってる……こんな女、どこがいいの……」
結構自虐的発言だと自分でも思った。
けど、切島くんは私の愚痴にも似た呟きを真剣に聞いてくれた。