第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
ホークスが、眉を顰めた。
ああああ!気分、害してらっしゃる!
私、ホンっと馬鹿!
これ以上変な事にならないように早いとこ謝っておいとま、しよ!
「あ、あの!本当にすみませんっ!私、酷く失礼な事を……っ」
取り敢えず立ち上がると深々と頭を下げて、謝罪した。
すると、クスクスと笑う声が聞こえたので顔だけ上げる。
ホークスが、口元を手で押さえて笑っていた。
「……あの……?」
「あ、いや……ふっ、すんませんね。アナタ、面白いなと思って」
「……おも……?」
「際どい質問したり、本音言ったかと思えばいきなり謝るし。メンタルやばそっスね」
メンタル……
いや、少なくとも今メンタルがヤバいのは、あなたの所為なんだけども……色々な意味で……
「……そうですね……ヤバいかも、しれないです」
あれ?
「今日、ホークスに会えるって思ってっ……昨日、美容院なんか行っちゃったり、メイクとか念入りに、しちゃったりして……」
何言ってんだ?私。
「それなのにっ……全然こっち、見てくんないし……っ……」
おいとまするんじゃ、なかったんかい!
「そりゃ、あの子に勝てるなんて微塵も思ってませんけどっ……今位、1ミリでもいいから、こっち見てくれたって……」
いたたまれなくなって、下を向いた。
目が熱くなって、もうすぐ涙が出そうなんだと悟る。
こんな滅茶苦茶な事言って、泣くとか……
ホント、馬鹿すぎ。
こんなの、ホークスが困っちゃう。
そう思っていると、目の前にティッシュを差し出されて思わず顔を上げた。
ホークスが、微妙な表情で立っていた。
「泣かれると、居心地悪いんで……やっぱ、メンタルやばいっスね、アナタ」
「……すみま、せん……」
「ほら、1ミリくらいは見ましたし……満足?」
そう聞かれて、返答に困ってしまう。
満足、って……
きっと、私は…………
「じゃあ、俺、まだ仕事溜まってるんで」
ホークスがふいっと私に背を向けた。
気付けば、彼の背中に抱きついていた。
「……やめてもらえませんかね」
「ごめん、なさい……けど、私……っ……一回だけで、いいです……から……」
自分でも、相当狂った事を言っている自覚はあった。
「俺の意思って、尊重されない感じっスか?」