第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
「……ぱっきーと、お付き合いされてるって……本当でしょうか……?」
紙を捲るホークスの手が、ぴたっと止まった。
部屋に沈黙が流れる。
ああああ!やっちゃった……!
編集長に、聞くなって言われてたのに……!
私……馬鹿すぎやしない……?
心の中で激しく後悔していると、ホークスが口を開いた。
「まぁ、事実ですね」
ああああ!マジでか!
本人の口から聞くと、尚更ショックだわ……
「……それが、明るい日本の未来と、どう関係あるんですかね」
「あ!す、すみません!全然……関係、なくて……あの……」
「今だったら録音、されてないし言える所は言いますよ」
そんなの聞いたって色々痛いだけだ。
けど……
「どうやって、お知り合いに……」
「……あの日、雨、降ってたんスよ」
そりゃ、地球が回ってりゃ雨位降るだろうよ。
「彼女、滅茶苦茶雨に濡れてたし白い服着てたから、下着透けちゃってて。それで俺、上着貸したんス。それが、切欠かな」
再び紙の山に目を落としていたホークスが、見た事もないような優しい表情を見せた。
きっとぱっきーは、ホークスのこんな表情ずっと見てるんだ……あぁ、ズルいわ……くっそ。
私は、ぱっきーを濡らした雨を心底恨んだ。
「そう、ですか……き、貴重なお話を……」
「人の恋の馴れ初め話なんか、貴重でも何でもないでしょ」
「いえ、そ、そんな……えと……」
「質問、続く感じスかね」
「あの、ど、どちらから……」
ホークスが、紙になにやら判子らしきものを押しながら言った。
「付き合おうって、言ったのは俺から」
「彼女の、どんな所を好きに……」
「んー……顔可愛いし、素直だし」
耳が痛い。
「月並みだけど、知るとこ全部が好きって感じスかね」
もう、止めてよ。
「……聞きたく、ない……」
うっかり、心の声が出てしまっていた。
「勝手に聞いといて、聞きたくないはないでしょ」
確かに、そうだ。
私は今日、ただ彼に明るい日本の未来についてインタビューしに来ただけだ。
それなのに……
私の、鞄を持つ手が震えた。
「っわ、私……っ、ずっと、ホークスに憧れてて……っ……」
「で?付き合ってるって聞いて、ショックでも受けた?……俺、アイドルじゃないんだけど」