第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
「はぁ……どなたに、どんなテーマで?」
私が尋ねると、編集長は言った。
「公安委員会会長に、明るい日本の未来について……ってところだな」
公安委員会会長。
……ホークスじゃんか……
「分かりました」
「……甘井、分かってると思うが」
「……はい?」
「くれぐれも、変な質問はするなよ」
……ああ……
「ぱっきーと付き合ってるって、やつですか……」
「分かってるなら、いい」
「……すぐに準備、します」
そして迎えたインタビュー当日。
公安委員会本部に来た私は、柄にもなくちょっと緊張していた。
これから、ずっと憧れてたヒーローに会えるのかぁ……
ドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえた。
「失礼いたします」
私が部屋の中に入ると、どっさりと積まれた紙の山を手際よく捌く公安委員会会長……ホークスがいた。
「どうも、今日はよろしくお願いします」
ほ、本物……!
私は、浮き立つ心をひた隠してお辞儀をした。
「本日はよろしくお願いいたします。甘井と申します」
「すんませんね、ちょっと、これに目通しながらでもいいっスか?」
パラパラと紙を捲りながらホークスが言った。
「お忙しいんですね……勿論構いません。では、これから録音させていただきますね」
そう言って、私はICレコーダーのスイッチを押した。
そして、30分後。
「……以上でインタビューは終了になります。貴重なお話ありがとうございました」
レコーダーのスイッチを切りながら、私は謝意を述べた。
「貴重かどうかは、分かんないスけどね」
紙に視線をやったまま、ホークスが言った。
憧れのヒーローとの会話が、たったこれだけで終わるなんて何かちょっと寂しすぎる……
これが仕事じゃなくて、プライベートだったらよかったなぁ……!
「……まだ、何か?」
ホークスが、視線を上げたので自然と目が合って、私の心臓は早鐘を打った。
「あ、いえ……」
何か……何でもいいから話がしたかったのかも知れない。
大好きだった、ヒーローと。
私は、禁断の話題に触れようとしていた。
「あ、あの、」
「はい?」
彼の気を引けるような話題なんて、ひとつしか思い浮かばなかった。