第4章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】
「把握しているなら教えてください。彼女はどこで何をしてるんですか?」
その質問には答えられないと言ったマキマに、アキは初めて食い下がった。
「…極秘の任務なのは分かります。…でも、もう何日も連絡すら付かなくて……その上、チェンソーの悪魔を狙ってきた敵の人間が彼女の写真を持っていたんです。……危険が迫ってるんじゃないんですか?」
「……」
「彼女は大切な仲間で…俺の後輩です。どうか、無事を確認するだけでも…」
「……」
しばらくの沈黙の後、マキマは言った。
「…ルルちゃんは……表向きは公安を辞めたことになってる」
予想外の言葉に、アキは驚愕した。
「…っ……辞めた?…いや、それより…彼女は生きてるんですね?」
声音に安堵と不安が入りまじる。
「もちろん生きてるよ。ルルちゃんには民間のデビルハンターとして裏の世界の情報を収集してもらっているの」
「…っ…それって……スパイ、という…事ですか?」
「……」
「そんな……なぜ彼女にそんな危険な仕事を…」
マキマはこれ以上は本当に話せないと言って会話を切った。
アキが部屋を出て行こうとした時、マキマはポツリと言った。
「ルルちゃんは銃の悪魔に近付く為に必死だった。この任務も、危険を承知で自分から志願したものだよ。……それって…一体、誰のためだったんだろうね」
4課の事務所へと戻るため静かな廊下を歩いていたアキは、胸が締め付けられるような思いがして立ち止まった。
"…銃の悪魔に近づくために、ルルが自分から志願?…俺は何も知らなかった…アイツの苦しみも、覚悟も…"
最後に会った夜、タクシーの中でルルは言っていた。
『確信が持てる手がかりを掴んだら、必ず1番に先輩に報告します。…その時は…力を貸してください…』
"ルルは確かにそう言ってた。…あの言葉に嘘が無ければ、有力な手がかりを見つけた後、アイツは俺にコンタクトを取って来るだろう…"
アキは、彼女に力を貸して欲しいと言われた時にいつでも動けるよう、心構えだけはしておこうと気持ちを引き締めた。