第4章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】
『ここに来る前に公安へ報告に行ったら…みんな、私が死んだと思っていたみたいで…とても驚かれました…』
混乱した状況の中で生存確認が取れず、4課の生き残りとして報告が上がらなかったのだろう。
アキは腕の中からルルを解放して、彼女の頬に手をあてた。
「…生きててくれて…本当に良かった…」
心から、そう思った。
ルルはアキの手の上に自分の手を重ねた。
『……私も…怖かったです……正確な情報が、なかなか入ってこなくて……すぐに、東京に戻りたかったけど…それもできなくて…』
彼女の声は震えていた。
『…アキ先輩に何度電話しても……ぜ、全然、繋がらなくて…っ……ホントに…怖かった…』
ポロポロとこぼれ落ちた透明な雫が、シーツを濡らしていく。
アキはもう一度ルルの身体を抱き寄せた。
『……姫野先輩のこと、聞きました……本当なんですか…』
「………ああ………あの人は俺のせいで死んだ…」
震えを抑えるように、強く目を閉じる。
あの時
パワーに姫野を連れて逃げるよう指示を出していれば
もっと早くデンジのスターターロープを引いていれば
中途半端に、自分が生き残らなければ…
姫野はあんな行動を取らなかった
死なずに済んだ
そんな、不毛なことばかりを考えてしまう
今となってはもう何もかも遅いというのに
腕の中では、ルルがまるで子供のように泣きじゃくっている
自分以上に涙を流してくれる彼女の存在に、どこか救われる思いがした。
柔らかな髪を撫でながら、アキは今回の事件を仕組んだ奴のことを絶対に許さないと、覚悟を新たにした。