第3章 初めてのキスは…【デンジ夢・後編】
雑魚寝だが、一緒に寝たことならパワーともある。ニャーコを助けた報酬として胸を揉んだことだってあった。けれど、パワーに対してはこんな気持ちを抱いたことは1ミリも無かった。
ずっと揉んでみたかった胸を初めて揉ませてもらった時も、こんなものなのかと愕然としてしまった程だった。
それなのに、いま目の前にいるルルのことは、寝顔を見ているだけで苦しい気持ちになり、タンクトップの胸元からチラリと見える谷間にも、恐れ多くて許可なく触れることはできないでいた。
彼女に感じる気持ちは、マキマに対してのソレとも少し違っていた。
強いていうなら、純粋な人の心を汚すことに躊躇する感覚に近かった。
「……」
デンジは、早川が一緒に暮らしていたルルに手を出さなかった理由(ワケ)を、少しだけ理解できたような気がした。
けれど、そんな理性的な思考とは相反するような年相応の欲望も、16歳のデンジには間違いなくあった。
"…あーぁ、俺って最低なんかなぁ。信用して家に泊めてくれてるルルさんに、こんな不純な気持ちを持っちまうなんて…"
柔らかな髪を撫でながらデンジが自己嫌悪に陥っていると、ルルがボンヤリと目を開けた。
『…デンジ君……あれ、サッカーは?』
「ルルさんが眠ってたから、消しちまった」
『ベッド、運んでくれたんだね……ありがと』
「おぅ…」
照れくさそうに頬を掻いたデンジにルルはふわりと抱きついた。
「っ…」
少し動揺しながらも、優しく抱きしめ返すデンジ。
『…眠れそう?』
「いや……まだ眠くねー、かも…」
正直に答えたデンジの腕の中で顔を上げたルルが、フッと微笑んだ。
『…デンジ君、少し変わったね』
「ぇ…」
『前にウチに来た時と違う。……なんか…女慣れ、した?』
「??」
戸惑うデンジにルルは更にたずねた。
『…ねぇ………姫野先輩との話、ホントなの?』
「何の、話?」
『……あのテロ事件が起きる直前にやった、ウチの課の新人歓迎会の夜。…デンジ君、姫野先輩にお持ち帰りされたんでしょ?』