第3章 初めてのキスは…【デンジ夢・後編】
公安対魔特異課が銃による一斉攻撃を受けたのは、それから数日後のことだった。
特異1課から4課までに所属していた人外以外のほとんどが死亡したこのテロ事件は、首謀者と見られる沢渡アカネの身柄を公安が確保したことで終わりを迎えた。
銃を流す見返りとしてチェンソーの悪魔の心臓を手に入れてくるようヤクザに要求していた沢渡は、自身が逮捕された場合には自動的に自殺するというところまでを銃の悪魔と契約していたらしく、聴取を受ける前に公安の庁舎内で死亡した。
そのため、彼女が何故チェンソーの悪魔の心臓を欲しがっていたのか、これほどの大きな事件にもかかわらず真相は分からないままになってしまった。
その後、全ての公安対魔特異課は人員不足を理由に統合され、マキマの指揮下に置かれることとなった。
今回の事件では、早川の部隊も甚大な被害を受けた。
付き合いの長かった姫野をはじめ、多くの仲間達を失ったルルのことを気にかけたデンジは、互いの非番が重なった日の前日に彼女を食事に誘った。
「先に言っとくが、今夜は帰らねぇぜ」
言いつけを守って堂々と朝帰りの予告をしたデンジを、早川は片眉を上げて見送った。
その夜、2人はルルの行きつけの店で夕食をとった。
食事を終え、店を出たところでデンジが言う
「なぁ…もう時間も遅いしよぉ…今夜はルルさんちに泊めてくんねぇ?」
『…ぇ……ぁ…うん。いいけど』
「マジで?やりぃ♪」
『ウチに泊まるならアキ先輩に連絡を入れてね。この間…デンジ君を無断外泊させたこと、後で怒られちゃったから…』
「それならもう言ってきたぜ」
その返事に、ルルは一瞬考え込んだ。
『…もしかして……今日はもともとお泊まり前提だった?』
「……ぇ、あ…いや、そーいうワケじゃねぇけどよぉ」
慌てて弁解するデンジ。
「…ここんとこ色々あったから、こんな日ぐらいはルルさんの側に居てぇって思ったんだよ」
『……デンジ君……………ありがと…』