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君の隣で眠らせて【チェンソーマン短編集】

第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】




「コン」



勝負は一瞬でついた。

「…はぁ……はぁ…」

アキの所へ元バディの姫野が走ってくる。

「どこを持ってかれたの!?」

焦った様子で聞かれたアキがシャツの袖をまくると皮膚が一部はがされていた。

『…っ!!』

痛々しい傷痕を見て驚いているルルを車に押し込み、姫野はアキを病院へと連れて行った。

アキが処置を受けている間に、姫野はルルにアキと狐の悪魔との契約について話して聞かせた。
狐の悪魔の力はとても強力だが、言うことをきかせるためには身体の一部を差し出す必要があるため、軽々しく呼び出す訳にはいかないとのことだった。

『……』



治療を終えたアキが待合室に戻ると、姫野の隣で座っていたルルが弾かれたように立ち上がった。

『っ、先輩!』

駆け寄ってくるその顔は、今にも泣き出してしまいそうだった。

「…なんて面してんだよ」

苦笑いするアキ

「…このくらいかすり傷だ。心配するな」
『……』

黙ってしまったルルの側を離れたアキは姫野の側へ行き、病院に付き添ってくれたことの礼を言った。


その後、3人は事務所へ戻って報告書を作成した。

マキマへの報告を終え、事務所を出たのはもう夜だった。
姫野はアキとルルを食事に誘った。

向かったのは、姫野とアキがバディだった頃によく一緒に行っていた中華料理店。
昼食抜きになってしまったために空腹だった3人は、テーブルいっぱいに料理を注文してガツガツと平らげた。



食後の一服をしながら、姫野が新しいバディはどうかと2人に聞いてくる。

「岸辺さんの推薦なだけあって結構動けます。連携も少しずつ上手くいってます」

とアキは素直な感想を述べた。

『私は、アキ先輩にご迷惑をかけないように日々精進するだけです』

そう答えたルルに姫野は優しく微笑んだ。


ルルがトイレのために席を外すと、姫野はもう一本タバコに火を付けた。

「…ルルちゃんて、ずいぶん真面目な子なんだねぇ」
「仕事に関しては、クソ真面目ですね」

アキが頷くと、姫野はニヤリと笑った。

「へぇ〜…その代わりベッドでは大胆、とか?」

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