第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】
『さっきの映画が、怖くて…なかなか眠れなかったんですけど……無理矢理寝たら…今度は夢に出てきて、目が覚めちゃって…』
「……はぁ……まったく…」
アキはため息をつきながらもルルを部屋に入れてやった。
「狭くても文句言うなよ」
『…はい。ありがとうございます…』
ルルはモゾモゾとアキの隣に潜り込んだ。
「落ちないように気をつけろ」
『はい…』
狭いベッドの上で、ピッタリと身を寄せるルル。
背中に体温を感じながらアキは聞いた。
「……眠れそうか?」
『…はい。これなら、多分…』
「………じゃあ、おやすみ」
『おやすみなさい』
しばらくすると、静かな呼吸音が聞こえてきた。
彼女を起こさないようそっと寝返りをうったアキは、規則的なそれを聴きながらボンヤリと寝顔を見つめた。
「…どこまでも世話の焼けるヤツだ…」
はだけた肩に布団をかけ直してやると、ルルの表情が和らぐ。
「……」
スゥスゥと聞こえてくる小さな寝息。安心したようなその寝顔に、アキの頬も思わず緩んだ。
指の背で白い頬をそっと撫でる。
男の自分とは全然違う柔らかな感触は、彼女が年頃の女の子だということを改めて自覚させた。
アキの指は頬から小さな耳たぶ、そして微かに開いた唇へと移っていく。
「…はぁ〜〜〜…」
押し付けられた迷惑な居候だったルル。
彼女のことを知れば知るほど無意識に心惹かれてしまう。アキはそんな自分に戸惑っていた。
「…くそ……どうしてこんな気持ちになるんだ…」