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君の隣で眠らせて【チェンソーマン短編集】

第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】



ルルが腕を出すと、アキは一度包帯を全部外した。痛々しい縫い跡が白い二の腕を斜めに横切っている。

「まだ痛むだろ…」
『もう、それほどでもないです』

アキは新しいガーゼをあてて丁寧に包帯を巻き直してやった。

「…傷、残っちまうのかな」
『どうですかねぇ…まぁ、気にしてないですけど』

そう言った彼女を、アキは少し咎めるように見た。

「…お前…もう少し自分を大切にしろよ」

真剣な表情でそう言うアキに、ルルはいつもの調子で言葉を返すことができなかった。
黙り込んだルルを見つめ返しながら、アキは続ける。

「自分を大切にできなきゃ…お前の夢だって、叶えることできないだろ…」

その言葉を受け止め、ルルは頷いた。

『はい!分かりました』
「ん…ならいい」

アキは微笑んで彼女の頭をクシャリと撫でた。

「さて、飯にするか…」

この夜、2人はカレーを食べながらテレビのお笑い番組を見た。
楽しそうに笑うルルの姿に"こういうのも良いモンだな…"と思う。仕事の時とはかけ離れた穏やかな時間に、アキも自然と笑顔になっていた。


食事と片付けが終わると、アキは「今夜も映画を観ないか」とルルを誘った。

『わー♪観たいです』
「昨日みたいにお前が泣かないようなやつを探してやる」
『…ぇ…そんな映画ありますかねぇ…私、すぐ感動しちゃうんで…』
「任せろ」

アキのセレクトに任せたルルは昨日と同じようにクッションと飲み物を用意して部屋の電気を消した。
そして、2人は並んで映画を見始めた。しばらくすると、ストーリーが不穏な方向へと進んでいく。その時、ルルはやっと気がついた。『コレはホラー映画だ』と。

画面に集中していたアキがふと隣を見ると、彼女は抱えたクッションに顔を埋めながら薄目で画面を見ていた。
普段、悪魔を斬りまくっているルルだから、ホラー映画なら大丈夫かと思っていたのに、しかもこんな子供騙しのような演出に怯えている彼女を見て、アキは吹き出しそうになってしまった。

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