第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】
『…ぁあ……先輩……ビックリした』
「それはこっちのセリフだ。こんな遅くに何してたんだよ」
『…あ、の……ちょっと、動画を見ていて…』
「動画?」
ルルはパソコンの画面をアキの方へ向けた。
それは対魔戦術の動画だった。
『…明日の稽古の、予習を…』
「……ハァ………お前なぁ…。まさか、毎晩こうやって夜更かししてたんじゃないだろうな…」
『はい。少しでもお役に立てるように…強くなりたくて…』
「…ったく…それで寝坊してたら世話ないだろーが」
『…すみません…』
アキに注意されて、ルルはまたもシュンとしてしまった。
「謝る必要はない…ただ、心配なんだ。…お前は、少し頑張り過ぎてる。……とりあえず、今夜はもう寝ろよ」
『…はい』
ルルはおとなしくアキの言うことを聞いて、ノートパソコンを閉じた。
「いいか。余計なはことせず、すぐに寝るんだぞ。分かったな?」
彼女の部屋の前で、念をおすアキ。
『はい』
「よし。じゃあ、ゆっくり休めよ。おやすみ」
『おやすみなさい…』
自室へと戻ったアキは、ベッドに横になると小さくため息をついた。
「…ハァ…」
ルルは、アキが今までに同じ部隊で仕事をしてきた誰よりも真面目で熱心なデビルハンターだと改めて分かった。
それは良いことなのかも知れないが、同時に危険に近づくことでもあった。
アキは彼女が今後危険な状況にぶつかった時にしっかりと対応できるよう、少しでも強く育てることを心に誓った。
翌朝、仕事の日よりも遅く、アキは7時半に目覚ましをかけた。
洗濯機を回し、豆から挽いたコーヒーを淹れてベランダで一服しながらゆっくり飲む。
8時になり、簡単な朝食をとってから部屋に掃除機をかけ、洗濯物を干し終わるとなんだかんだで9時になっていた。