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君の隣で眠らせて【チェンソーマン短編集】

第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】



『…うーーーん…』

ルルはしばらくの間考えてから、言った。

『無いですね』
「そ、そうか…」
『あ!でも、ひとつあるかも…』

何かを思いついたようにパァッと笑顔になる。

「…なんだ?教えてくれよ」

明るい兆しに期待を持ったアキに、ルルは言った。

『アキ先輩の、彼女になりたいです!』
「ぶはっ!!」

思いがけない言葉に驚き、吸い込んだ煙でむせるアキ。

「ゲホッゴホゴホッ!!…お、お前…いきなり何言い出すんだ…」
『えへへ…それが、もう一個の私の夢ですね!』

ルルはあっけらかんとそう言うと、『洗い物して来ま〜す』と言って部屋の中へ戻っていってしまった。

一人残されたアキは、ベランダで呆然と立ち尽くした。

「……………は??」


思えば、出会ったときからルルは変わったヤツだった。
本気なのか冗談なのか分からないことをしょっちゅう言ってはヘラヘラと笑っていて、掴みどころの無い彼女のことが最初のうちは少し苦手だった。
けれど、ルルの明るく素直な性格や、仕事に対しての熱量と真面目さに認めるところがあったアキは、少しずつ彼女のことを仲間として受け入れるようになっていったのだった。


鼻歌を歌いながら皿を洗うルルを窓越しに見つめる。

「…アイツ…人の気も知らねーで…」

小さくため息をついたアキは、先程の彼女の言葉はいつもの冗談だと割り切って考えることにした。


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