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君の隣で眠らせて【チェンソーマン短編集】

第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】



久しぶりに食べる、自分以外の人間が作った家庭料理をしみじみと味わいながら、アキは同居を頼まれた時にマキマから聞かされた彼女の身の上について思い出していた。

ルルは銃の悪魔に家族を殺された後、ずっと施設で暮らしてきた。
そして2ヶ月程前、16歳の誕生日を迎えて施設を出た彼女は、高校を中退し、公安の寮に入ってデビルハンターとして働き始めた。
その訓練中に素質を認められたルルは、指導を担当した対魔特異1課の岸辺に推薦され、4課のアキの部隊に配属されてきたのだった。


食事を終えたアキは、ベランダへ出てタバコに火をつけた。
煙を燻らしながら考える。アキ自身も幼い頃に銃の悪魔によって家族を殺され、天涯孤独になっていた。
同じ身の上のルルに対して、他人事とは思えない気持ちを持った。

その時、ベランダの窓が開いてアイスキャンディを手にしたルルが外へ出てきた。

『…わぁ…いい風ですね』
「ああ、今夜は涼しいな…」

タバコを燻らすアキを、興味深そうに見つめるルル。

『…私も吸っていいですか?』
「ダメに決まってるだろ」
『えー…ちょっとくらい、いーじゃないですかぁ』
『こんなもん、骨が腐るからやめとけ。お前にはソッチの方がお似合いだ」

子供扱いされたルルは少し不満そうな顔をしたが、それ以上は何も言わずにおとなしくアイスをかじった。
ベランダの柵に肘をついて、景色を眺める。夜風がそよそよと彼女の柔らかな髪をなびかせていた。

「…なあ、お前はこれからどういうデビルハンターになりたいんだ?目標とかあるのか?」

ルルはアキの方へ顔を向けると、キッパリと言った。

『私の目標は、銃の悪魔を殺すことです』

彼女が自分と同じ目標を持っていることを知ったアキは一瞬言葉を失い、それから静かに答えた。

「そうか。…でも、復讐のために生きるのは辛いぞ。他に夢はないのか?」
『…他に、ですか…?』

復讐に生きる者の苦しみを身をもって知っているアキは、ルルのような女性ならもっと他の、同じくらいの年齢の女の子達が抱くような人並みの幸せを夢見て生きる選択肢もあるのではないかと思ってしまったのだった。

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