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君の隣で眠らせて【チェンソーマン短編集】

第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】



仕事現場への移動は公共の交通機関を使うことも、今日のように公安の車で送ってもらうこともあった。
後部座席で窓の外を見ていると、運転手から「到着まであと五分」との声がかかる。
アキは現場の地図を広げた。

「…役割分担を確認しておくぞ。俺は正面から入って注意を引き付ける。お前はこの路地から裏口に回り込んで、隙をみて攻撃を仕掛けろ」
『はい』
「相手はかなり攻撃的な魔人だという情報が入ってるから油断するなよ。命の危険を感じたら即座に撤退しろ」
『分かりました。…あ、あの背の高いビルが現場ですかね?』
「ああ。そうみたいだな…」

周囲を警戒しながら2人は準備を始める。
薄暗い路地の前に、車は静かに停まった。

『ぅわぁぁ…いかにも居そうですね』
「落ち着け。車降りる前に深呼吸しろ」
『スーーーハーーー…』

素直な子供のようなルルにアキは苦笑いしながらドアを開けた。

「行くぞ…」

先程の作戦通り二手に分かれる。正面から突っ込んで敵の気を引くアキ。その隙をついてルルは裏口から攻め込んだ。
作戦は成功し、敵に大きなダメージを負わせることができた。

「やったか!?」

血を吹き出しながら暴れる魔人。

『私がとどめを刺します!』
「待て!一旦下がれ!」

アキの静止を聞かず、ルルは断末魔の叫びをあげている相手に向かって突進していった。

苦しみ暴れまわる魔人になんとか喰らい付き、とどめを刺す。

『…ハァハァハァ…』

相手が倒れて動かなくなったのを見届けて、ルルは顔を上げた。

『先輩!やりました!』

嬉しそうにそう言ったルルに、アキは近づいて怒鳴った。

「バカヤロウ!なんで指示を無視した」
『…す、すみません……いけると思ったので…』

頭を下げたルルの足元にポタポタと血が滴る。
アキが慌てて確認すると、左の二の腕を切られたようでシャツが真っ赤に染まっていた。

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