第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】
「公安のデビルハンターとしての生活に慣れるまで…しばらくの間、ルルちゃんの面倒を見てあげて欲しいの」と、アキが半ば強引にマキマから教育係を任命されたのは先週のことだった。
ルルが公安に入ってから2ヶ月。女子寮で暮らしていたはずの新人バディをわざわざ居候させるように言ったのは、何度注意しても直らない彼女の寝坊癖のせいだったのだろうと、今なら想像がつく。
アキは、面倒ごとを押し付けられるのにはもう慣れてしまっていた。
それでもマキマから頼りにされていると思えば、悪い気はしないのだった。
『お待たせしました!支度できました!』
イライラしながら玄関で待っていたアキの前へ、ネクタイを手に持ったままドタバタとルルが出てくる。
彼女の髪はボサボサで、ワイシャツの前ボタンがズレていた。
「…何だその格好は。シャツのボタンを直せ」
『ぁ…』
段違いになっていたボタンを直しているルルの髪を手櫛で整えてやるアキ。
「…まったく、世話が焼ける」
呆れたようにそう言うと、彼女の手からネクタイを取り上げて首元で結んでやった。
「よし。行くぞ」
『ありがとうございます!今日も頑張りましょう!」
「…ふん、当然だ」
調子の良いルルを一瞥して、アキはドアに鍵をかけた。
「ただし、余計な真似はするなよ」
その声には微かな心配の色が混じっていた。
『はい。この前みたいなヘマはしないよう気をつけます!』
「ああ…頼む」
エレベーターに乗り込みながら、アキはふと思い出したように言った
「そういえば、昨日の戦い方はなかなか良かった。まぁ、まだ甘いところはあるが…」
『ホントですか!?やった♪アキ先輩に褒められた〜』
「…調子に乗るな」
厳しい口調で言いつつ、思わず口元が緩む
「でも、元から素質はあったようだし…このまま頑張れば一人前になれるだろ」
『はい!精進します』
アキは頷いてルルの肩をポンと叩いた。
教育係として見れば彼女はとても真面目で、デビルハンターの仕事に対しての評価もまずまずだった。