第1章 初めてのキスは…【デンジ夢・前編】
「なぁ…」
自分に対してこんな風に接してくる彼女の本心を確かめたくなったデンジは、言葉に詰まりながら言った。
「あ、あのよぉ…俺とくっついて寝んのって…ルルさんにとっちゃ、普通のことなのか?」
『……ぁ、そっか。ゴメンゴメン』
ルルはデンジから身体を離す。
突然距離を置いた彼女をデンジは慌てて引き止めた。
「い、いやいや!別にいいんだけど。ただ…ちょっとビックリしたっつーか」
どう弁解したらいいのかわからなくなっているデンジに、ルルは申し訳なさそうに言った。
『デンジ君が好きなのはマキマさんだもんね。…私、今日は飲み過ぎちゃってさぁ…ホントごめんね』
デンジに背中を向けてしまうルル。
突然のことにデンジは焦りまくった。
「え!?いや、それは違ぇって!確かに俺ァ、マキマさんのこと好きだけどよぉ…今はなんつーか…」
「いいよ。無理しないで。…もう、寝よ?」
けれど、デンジは必死に弁解しようとする。
「違うんだって。聞いてくれよ…俺は…」
言葉に詰まって上手く言えないデンジにルルは背中を向けたままだった。
「俺…ルルさんのことが気になっててよぉ。…今日もずっと楽しくて……だから、ルルさんさえ良ければもっと近づきてぇなって思ったんだよ」
顔を真っ赤にしながら告白するデンジ。
心臓バクバクで返答を待つが、ルルは何も言わなかった。
「…や、やっぱり変だよな……俺に言われても困るよなぁ………………………な、なんか言ってくれよルルさん……無視されんのが、一番辛ぇよ…」
デンジは身体を起こし、恐る恐る彼女の顔を覗き込んだ。
「怒ってんのか?…俺、なんか悪いこと言っちまったかなぁ…」
顔を見るとルルはもうとっくに夢の中だった。静かな寝息が聞こえてくる。
「はぁ??…寝ちまってたのかよぉ」
デンジはガクッと肩を落とした。安心したような残念なような複雑な心境だった。
「まったく…酔っ払いめ」