第55章 伊黒との静かな夜 ― 呪縛を解く星空
数日後、私は伊黒さんに付き添われ…
現在、お館様の前に座っている。
私の悩み……
不誠実で誰一人選べないという苦しみを、お館様は穏やかな微笑みを絶やさずにすべて聴いてくださった。
「 。自分を責める必要は、どこにもないんだよ」
お館様の鈴を転がすような声が、私の心に浸透していく。
「君が一人を選べないのは、君が不誠実だからではない。君の心が、それだけ広くて深いからだよ。皆の痛みも、喜びも、等しく愛せてしまう……。それは、この殺伐とした世界で最も尊い、一種の『才能』なんだ」
「才能……ですか?」
「そう。太陽がすべてを照らし、雨がすべての乾きを癒すように、君の愛は皆に必要なものなんだ。……ならば、無理に一人に絞り、誰かを絶望させる必要がどこにあるだろう? 全員を愛し、全員に愛される道があってもいい。私は、それを全力で肯定するよ」
お館様のその「全肯定」の言葉は、私にとって最大の救いでした。伊黒さんは隣で静かに私の肩を抱き寄せ、深く頷いています。
運命の糸は、一本に結ばれるのではなく、色とりどりの糸が織りなす「大きな布」へと変わろうとしていた。
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