第5章 月影に背を向けて
いつもよりも引き締まった練習が終わり、飛雄くんに頼まれてストレッチの手伝いをする。背中を押して前屈をしているが、私は必要あるのだろうか…私は手を添えているだけで、飛雄くんは床に胸がついている。
起き上がって腕を伸ばしながら見上げてくる。飛雄くんはいつも、真っ直ぐな目をしているな。どうしたのだろうと見つめ返していると、また唇が重なった。もっと警戒しないと…。
飛雄くんの口元を押し込み、そのまま押さえる。お尻が滑った飛雄くんは私の膝の上に頭を乗せた。なんで、みんなの前でするかなぁ…。
顔に熱が集まるのがわかり、俯いたまま空間を見つめる。
「バカ…」
口元を押さえていた手が取られ、弧を描く唇を睨んだ。絶対見られたよね?恥ずかしくて顔を上げられない。頬は撫でられるし、「可愛い」と言われるし…胸が苦しい。
「お前ら…まだ部活中だってわかってるんだよな?」
「「はい…」」
なんで私まで…縁下さんの低い声が耳に響く。飛雄くんが起き上がったのですぐに立ち、頭を下げた。最近、こんなことが多い気がする。飛雄くんがところ構わず、キスをしてきたりするから…。
唇にはまだ、飛雄くんの感触が残っていた。