第2章 始まりの糸
お風呂上がり、既に母や義父は寝室にいる。寝ているかはわからない。でも、私が今から蛍の部屋に行っても、バレることはないだろう。
階段を上がって蛍の部屋の扉をあまり音を立てないように軽くノックをし、潜めた声をかけた。すぐに扉は開き、薄暗い部屋に招き入れられる。肩を抱かれ、蛍の温かい胸へと額を寄せた。
忘れさせるのなら、とことん忘れさせて欲しい。この切ない想いも、高鳴る痛い胸も、全部…蛍のものにして。そう思うのに、どうしようもなく私は、あの人を想ってしまう。影山くん…。
母たちにバレないように少し話を始める。もしまだ寝ていなかったら、ここに来てしまうかもしれない。
「揺、あいつのこと見てた。僕に汚されてるくせに、どこ見てんの」
違う、私は蛍に汚されてなんかいない。私が拒めば、すぐにやめることだって知っている。それでも拒まないのは……私にもわからなかった。
幼馴染だったから?違う。わからない…私は影山くんを想っているはずなのに、蛍には許してしまうのだ。純潔さえも許せてしまった。
「ごめん、わからないの…自分がどうしたいか、わからないの。嫌じゃないの。蛍に触れられるの、嫌じゃないの」
自分の気持ちすらもわからないのに身体を許してしまうのは、自分でもバカだと思う。それでも――未だに答えは出ない。幾ら抱かれれば、その答えは見つかるのだろうか。
「好きだからだよ。揺は僕のこと、好きなんでしょ。だから、僕のことだけ見てればいい」
そう刷り込むように、支配するように、耳元で囁いた蛍の言葉は高鳴る淡い熱など忘れろと言うように、私の全てを包み込んだ。
温かい唇が重なり、舌が絡まるのは、蛍の腕の中に落ちていく合図。二人の熱は溶け合い混ざって、1つになる。