【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
仁美の声は震えていたけれど、はっきりと冷たさがあった。
「……もう期待、させないでよ。」
その一言が夜気を震わせた。
黒尾は言葉を詰まらせ、唇をかすかに噛む。
彼の中で、今まで当たり前だった“関係”が、音を立てて揺らいでいくのがわかった。
研磨は黙ったまま2人を見ていた。
手を離さないまま。
冷たい夜の空気の中、3人の間に伸びた影が、じりじりと絡まりながらも、ゆっくりと――確実にずれていった。
仁美は研磨の方に向き直ると、いつもと変わらないように小さく一言だけ告げた。
「……おやすみ、研磨。」
そして、そのまま家のドアを開けて中に入っていった。
振り返ることはなかった。
黒尾は伸ばしかけた手を途中で止める。
何か言おうとした言葉が喉の奥で渦巻いたが、声にはならなかった。
ドアが静かに閉まる音だけが、夜の空気に沈んでいく。
残されたのは、研磨と黒尾だけだった。
黒尾はポケットに突っ込んでいた手をゆっくりと出し、じっと研磨を見つめた。