【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「……研磨。」
研磨は何も言わない。
ただ、夜風に前髪を揺らしながら、黒尾を見返していた。
「仁美と……何してた。」
低く、押し殺した声だった。
あの泣き腫らしたような目。
赤く腫れた唇。
黒尾は息を詰まらせ、拳をゆっくりと握りしめた。
黒尾はゆっくりと、しかし確実に研磨との距離を詰めていった。
夜道の薄暗い街灯の下、彼の瞳には焦りと苛立ちが滲んでいる。
「なぁ、研磨。」
研磨は何も言わず、ただ黙って黒尾を見返す。
無言のその顔が、余計に黒尾を追い詰めていく。
「答えろよ。」
黒尾の声が少し強くなる。
研磨は少しだけ視線を落とし、息を吐いた。
逃げる気も、言い訳をする気もなかった。
そして短く、はっきりとした声で言った。
「……仁美が泣いてたから……キスした。」
その一言が、夜気を裂いた。
わずかな虫の音さえ、ピタリと止まった気がした。
黒尾の表情が一瞬、固まる。
理解するまで、数秒の沈黙が落ちた。