【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
黒尾の胸の奥がざらりと冷たくなる。
周りの空気が、急に張り詰めた。
黒尾は一歩、仁美の方へと踏み出した。
いつもの調子を装うように、少し眉を下げて口を開く。
「……あれは、違うんだ。」
言い訳が喉から出るよりも早く、仁美の瞳がそれを拒んだ。
睨むような視線。
その中に、怒りと、失望と、痛みが入り混じっている。
仁美は研磨とは違って、黒尾が自分に好意を持っていることを、ずっと前から分かっていた。
授業中に目が合う回数も、何気ない距離の近さも、他の女子と自分への態度の差も––––全部、気づいていた。
だから、ずっと期待してしまっていた。
彼が笑いかけてくれるたび、触れるように名前を呼ぶたび、心のどこかで、特別だと信じてしまっていた。
だけど、黒尾には他に好きな人がいた。
許せなかったのは––––––。
他に好きな女が出来たのに、その態度が変わらなかったからだ。
優しい笑顔のまま、ずっと曖昧な距離を保ち続けていた。
「……クロ…。」