【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「……研磨ってさ。」
「ん。」
「……あたしのこと、好きなの?」
歩く足が、ほんの少しだけ止まる。
研磨の横顔が夜風に揺れた。
仁美の問いに、研磨はほんの一瞬だけ目を細め––––。
次の瞬間、笑った。
「……今さら、気づいたの?」
その声は、いつもの調子と変わらなかった。
軽く、からかうような口ぶり。
けれど、そこにほんの少しだけ滲んだ何かに、仁美の胸がきゅっと縮んだ。
彼の気持ちなんて考えたこともなかった。
ずっと、黒尾のことで頭がいっぱいで、好きな人の話を、彼にだって何度もしてきた。
相談して、愚痴って、笑って––––。
全部、彼は黙って聞いてくれていた。
「……ごめん。」
その言葉が自然とこぼれる。
どんな顔をしていいのか分からなくて、仁美は俯いた。
繋がれた手をきゅっと握りしめる。
研磨は仁美の横顔を見て、ふっと息を漏らした。
「……もう、慣れたし。」
その言葉は、不思議なくらい静かだった。