【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
2人で倉庫を出ると、夜の空気が肌に当たる。
文化祭の余韻はまだ校舎のあちこちに残っていたが、さっきまでの賑やかさはもうない。
残っているのは、片付け待ちの屋台と、遠くから聞こえる笑い声だけだった。
生徒のほとんどは、打ち上げに流れていた。
通りすぎる廊下には、もう人影もまばら。
足音だけが二人の間に響く。
「……。」
何も言わなくても、研磨には仁美の気持ちが分かった。
彼女もまた、黒尾の影を避けている––––。
そのことに、気づかないふりをした。
夕方の校舎を抜け、街灯がぽつぽつと並ぶ帰り道を歩く。
2人の手は、自然とまだ繋がれたままだった。
声を交わさなくても、手の温度だけが確かに伝わってくる。
さっきまで体育倉庫で重なっていた熱が、まだ手のひらの奥に残っていた。
仁美は横を歩く研磨をちらりと見上げた。
月明かりに照らされた彼の横顔は、どこかぼんやりとした表情で、いつもの研磨そのものだった。
だけど–––––
自分の手は、彼の手の中にある。