【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
仁美は何も言わなかった。
ただ小さく息を吸って、視線を落とす。
2人のあいだに流れる空気は、さっきよりもずっと静かで、だけど、まだどこか危うく、熱を残していた。
「……打ち上げ、行く?」
倉庫の扉に手をかけながら、研磨が振り向いて仁美に問いかけた。
外の夜風が少しだけ入り込み、倉庫の中の熱を攫っていく。
仁美は少しだけ間を置いて、首を横に振った。
「……行かない。」
その声は小さく、それでもはっきりしていた。
黒尾が彼女を連れているかもしれない––––。
彼が後夜祭で女の人と一緒だったと、噂を聞くかもしれない。
そう考えるだけで胸の奥が苦しくなった。
顔を合わせるのも、今は怖かった。
打ち上げのざわめきの中で笑うなんて、到底できそうになかった。
研磨はそれ以上、何も聞かなかった。
ただ静かに、仁美の手を取る。
ためらうことなく、そのまま彼女を立たせた。
彼の手はあたたかくて、少し汗ばんでいた。