【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
指先で一つずつ拾ってコップに戻す。
その仕草は、さっきまでの熱とは正反対で、妙に静かだった。
研磨も屈み込んで一緒に拾い始める。
「……こぼしすぎ。」
研磨がぼそっと言うと、仁美はふっと息を漏らした。
笑ったわけでもないのに、その音がやけに柔らかく響いた。
2人の指先が、床に転がっていたポテトに同時に触れた。
わずかに触れ合う指。
ほんの少しの距離なのに、空気が変わったのが分かった。
顔を上げると、研磨と仁美の視線がぶつかった。
一瞬、時間が止まったようになる。
気づけば、研磨はまた彼女に顔を近づけていた。
短く、やさしいキス。
さっきの激しさとは違う、まるで“余韻”のようなキスだった。
唇を離すと、研磨は一瞬、息を止めた。
薄暗い倉庫の中、仁美の唇が赤く腫れているのがはっきりと見えた。
さっきまでの長いキスの跡が、そこに残っていた。
その色が、やけに艶めいて見えて––––
研磨の胸の奥に、言葉にならない熱が再び灯る。