【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
クラスチャットは、文化祭の打ち上げの連絡や、「後夜祭もう終わるぞ!」という他愛ないメッセージで溢れていた。
その中に混ざって、黒尾のメッセージ。
『仁美、どこにいる?』
『研磨、そっちにもいない?』
研磨のスマホにも同じ内容が届いている。
見なくてもわかった。黒尾はずっと2人を探していた。
仁美はスマホを見つめたまま、指先がかすかに震えていることに気づいた。
ずっと止まっていた時間が、外の世界ではちゃんと進んでいた––––その事実が、重く胸にのしかかる。
研磨は顔を上げ、外の扉をちらりと見た。
後夜祭のざわめきはもう遠く、校舎の中はほとんどの生徒が帰り始めているらしい。
足音も、笑い声も、もうほとんど聞こえない。
「……出よう。」
研磨がぽつりと呟いた。
閉ざされた体育倉庫の空気を、ようやく破るような声だった。
仁美は小さく頷き、床に転がっていた紙コップを手に取った。
中身は、さっきのフライドポテト。
冷めて、少し油の匂いが広がっている。