【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「仁美、どこ行った?」
周囲のざわめきとスピーカーの音に紛れて、黒尾は何度もその名前を探した。
どこを探しても2人の姿はない。
スマホを取り出してメッセージを打つが、既読はつかない。
「おかしいな……。」
後夜祭は始まっていた。
校庭の真ん中ではキャンプファイアーが燃え、音楽と笑い声が空に響いている。
照明に照らされた夜の校舎は、昼とは違う顔をしていた。
(……あいつら、どこ行ったんだよ。)
胸の奥が、ほんの少しざらりとした。
説明のつかないざわめき。
けれど黒尾は、その正体にまだ気づこうとしなかった。
気づきたくなかったのかもしれない。
「黒尾ー! こっち手伝ってー!」
同級生の声に手を振り返しながら、黒尾は表面だけ笑って、足を止めた。
それでも視線は人混みの奥を探し続けていた。
仁美と研磨が一緒にいる光景なんて、これまでにも何度もあった。
だから今日もきっと、どこかで2人してふらっと姿を現すはず–––。
そう思い込もうとしていた。