【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
他に好きな女がいるくせに、仁美への想いを中途半端なまま、曖昧に残していた黒尾に。
そしてそんな黒尾と、笑い合っていた仁美を、ただ見ていることしかできなかった自分にも。
(俺は……何してたんだよ。)
ずっと、見てるだけだった。
彼女を誰よりも近くで見ていたのに––––。
その距離を一歩も縮めようとしなかった自分に、苛立ちが込み上げる。
彼女の涙が頬を伝い落ちる。
その滴が床に落ちる前に、研磨は仁美の頬に触れた。
濡れた肌の感触が指先に伝わる。
仁美がびくりと肩を震わせる。
「……やめて……」
弱く押し返そうとする手を、研磨はそのまま包み込む。
視線が絡まる。
そのまま、彼は仁美をそっとマットに押し倒した。
息がぶつかるほど近い距離。
研磨の瞳の奥に、いつもの無気力さはなかった。
そこにあったのは、濃く、熱く、どうしようもない想いだった。
「……俺、ずっと、」