【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「クロに……好きな人がいるって。前から、知ってたの?」
研磨は、一瞬だけ目を伏せた。
その沈黙が、答えそのものだった。
「……うん。」
短く、はっきりと頷いたその言葉が、仁美の胸に突き刺さる。
今にも涙が溢れそうな瞳で、彼女はもう一度問い詰めた。
「なんで……なんで、言ってくれなかったの?」
研磨はすぐには答えられなかった。
唇がかすかに動いて、声にならない息がこぼれる。
やがて、彼は目を伏せたまま、静かに言った。
「……クロの気持ちを、勝手に話すわけにはいかないから。」
冷たく言い放ったわけじゃなかった。
けれどその言葉は、仁美の心に、余計に深い影を落とした。
信じていた時間と記憶の隙間に、ずっと知らなかった“黒尾と研磨の距離”が見える気がした。
仁美は視線を落とし、震える拳を膝の上でぎゅっと握る。
涙がぽたり、とマットに落ちた。
仁美の涙に濡れた瞳を見つめながら、研磨は奥歯を噛みしめる。
苛立ちの対象は黒尾に対してだ。