【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第15章 Loving Them Is Ruining Me
ゆっくり一度だけ頷いた。
「……分かった。」
その返事に、黒尾の表情がほんのわずか緩む。
すぐ隣に立つ黒尾の気配を感じながら、仁美は靴を履いた。
靴を履き終えて仁美は研磨に挨拶をした。
挨拶をするときに、研磨の顔を見なかったのは初めてだった。
研磨はそのことにすぐ気づいて、それ以上何も言わずに二人を見送った。
外に出ると、夜の空気は思ったより冷たかった。
黒尾は何も言わずに仁美の手を取り、指と指が絡まった。
仁美が黒尾を見ると、黒尾はほんのりと頬を赤くして、どこか満たされた顔をしていた。
その表情が、高校の時の黒尾とはっきり重なった。
三年という時間を挟んだはずなのに、今ここにあるのは、あの頃と同じ距離感だった。
それが、どうしようもなく。
怖い。
仁美は喉の奥がひりつくのを感じながら、視線を前に戻した。
何も変わっていないのは、安心なんかじゃない。
むしろ、なにも終わっていなかったことの証みたいで。
胸の奥を、ぞっとするほど冷たいものが撫でていった。