【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第10章 Honeyed Threat
スリッと仁美の頬を撫でながら、黒尾は仁美の耳元で囁いた。
仁美は腕を上げると、黒尾の頭を撫でた。
「…ちょっと怖かった…。」
「ん…ごめん…。」
黒尾は仁美の顔を見つめると、唇を押し付ける。
今度は繊細に、深くキスを落とす。
黒尾はゆっくり身体を離し、部屋のティッシュやタオルを手に取った。
「寒くない?」
布でそっと肌を拭いてくれる指先は、さっきまでとは別人のように繊細だった。
強引さの残滓が消えていくたび、胸の奥が妙に温かく、切なくなる。
仁美の服を整えながら黒尾は何度も、何度も、息のように呟く。
「大事にするから。離れないで。……な?」
その声は、甘さと不安と執着が入り混じっていた。
仁美 はただ黙って頷いた。
それが、黒尾の腕の力を、そっと緩めていく合図になった。
服を整え終わったころには、部屋の空気の熱も少し落ち着き、仁美 の呼吸もようやく自然に戻っていた。